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ラテンアメリカ編 パナマ共和国

1)パナマの劣悪な酸性土壌(アルティソル)での挑戦

はじめに

 筆者は、1994年から、パナマの国立農牧研究所(Instituto de Investigacion Agropecuaria 
de Panama : IDIAP)のスタッフとともに、劣悪なアルティソル土壌地帯(交換性Al含有量として
約3〜4meq/100ml含有している)において、Neemの植林試験を開始してきた。
 植林試験を開始するに当たっては、Neemの最適環境を提供することを目的とした土壌改良
を含めた形で試験を開始したのである。ちなみに、本植林試験はNeemの普及を目的としてい
るだけではなく、このような劣悪な環境に適応できる樹種を選択することにあり、よい成果が得
られた樹種の成果も同時に報告していく。

実験材料および方法

1.導入樹種
Neem (Azadirachta indica) およびJagua (Genipa americana) (括弧内は導入樹種の学名であ
る)。
Jaguaの起源地は、カリブ海域、南米北東部であり、熱帯アメリカの在来樹種と称してもよいの
だろう。

2.樹種 × 施肥処理区
 供試樹種は前記した6種であるが、さらに、各樹種に施肥処理区を設け (施肥は1994年7月
のみ) 、最終的に、樹種 × 施肥形態という二因子による比較試験を実施した。施肥処理区
は、@Lime+N+P+K処理区、ALime+N+P処理区、BLime+N+K処理区、CLime+P+K処理区、
DN+P+K処理区、E複合肥料 (12-24-12) 処理区およびF対照区 (0-0-0) である。なお、肥
料について、Nは尿素 (Nとして46%)、Pは重過石 (P2O5として46%) 、Kは塩加 (K2Oとして
60%) 、複合肥料 (N、P2O5およびK2Oとしてそれぞれ12%、24%および12%) およびLimeは炭酸
石灰 (33%Ca、0.8%Mgおよび83%CaCO3含有、以下、石灰と称する) を選択し、樹1本当たりの
施用量を、それぞれ60gN、120g P2O5、60g K2Oおよび2,200gとした。そして、各樹種処理区は
1区画 (18m×18m) 当たり、36本 (3m×3m間隔で) 植栽するため、20cm程度の穴を開け、そ
こにこれらの肥料を施用し、穴を開けた土の一部を利用して覆土した。その後、苗木を植付
け、残りの土を利用して固定した (反復制は導入していない)。

結果および考察 

1.Neem
写真 1に移植3ヶ月後のNeemの生育状況を示す。また、図 1は3年間にわたるNeemの樹高の
推移を示すが、Lime+N+P+K処理区の樹高が高く、苗木の初期生育にとって、石灰や各種肥
料の施用が重要であることが分かる。
写真 1 移植3ヶ月後のNeem
(撮影 冨田,1994)
 
図 1 Neemの樹高(cm)の推移
 
図 2 Neemの生存数の推移

しかし、図 2にはNeemの生存数を示すが、各処理区とも時間に応じて減少していくことが観察
された。これはおそらく、石灰の不足とAl障害によって生育が阻害されたものと思われる。
写真 2にNeemの植栽1年後と5年後における生育状況を示すが、これらの樹種は定期的な施
肥を継続しなければアルティソル土壌地帯では不適であると結論付けた。

2.Jagua
図 3および図4にJaguaの樹高および生存数の推移を示す。この樹種は本実験に用いた樹種
において、各施肥処理区 (特に、Lime+N+P+K施肥区は顕著) における生存数が高い樹種で
あり、同地区の強酸性ならびに重粘質という土壌条件の他に、長期にわたる (4〜5ヶ月) 乾季
に対しても耐性が強いといえよう(写真 3)。

写真 2 Neemの植栽1年後(上段)、5年後(中段)の生育状況、および5年後における枯死樹
種(下段)
(撮影 冨田,1995および2000)
 
図 3 Jaguaの樹高の推移
 
図 4 Jaguaの生存数の推移

写真 3 Jaguaの植栽1年後(上段)、5年後(中段)、および6年半後(下段)の生育状況
(撮影 冨田,1995および2000)

おわりに

 アルティソル地帯におけるNeemの導入試験は、苗木の移植時のみに施肥を行うという形で
あったが、移植後1年目は生育ならびに生存数ともに良好であった。しかし、時間とともに石灰
の効果は薄れ、高Al濃度であるパナマのアルティソル地帯には不向きであり、1997年で終了し
た。この結果より、移植して苗が5m程度に生長するまでは、年毎の定期的な施肥が必要であ
るかもしれない。これは、筆者らにとっては一つの失敗であったが、プラスに解釈すれば、収穫
であったように思っている。
 Jaguaに関しては、劣悪なアルティソルとはいえ、Lime+N+P+K処理区において、良好な生育
と生存数を得られることができた。これは、適応樹種の一つであることが分かったので、一つ
の成功であった。この他、別の試験結果であるが、チーク (Tectona grandis)や熱帯のマツ類 
(Pinus carebaea)も同地区(アルティソル)に適応可能な樹種として評価している。
いずれにせよ、Neemに限らず、導入地域における土壌理化学性を調べ、適切な施肥を含め
た形で植林を行い、地道な生育調査を行う姿勢は必要であろう。定期的な施肥を行うことによ
って、勿論、コスト的な問題が生じてくるが、採用樹種の有益性・商売性を十分に検討し、総合
的に判断していく姿勢が必要であろう。

参考文献

冨田健太郎 2003 : パナマのアルティソル地帯における植林の実際(その2)−7年にわたった
植林奮闘記−, 農業および園芸 78(4), 養賢堂, 462-469.




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